法律上定められた制度として、①後見、②保佐、③補助があります。
契約上認められた制度として、④任意後見があります。
①後見、②保佐、③補助は、ご本人がひとりで決めることが心配になったとき、家庭裁判所によって、成年後見人等が選ばれる制度です。ご本人の不安に応じて「補助」「保佐」「後見」の3つの種類(類型)が用意されています。
家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(補助人・保佐人・成年後見人)が、ご本人の利益を考えながら、ご本人を代理して契約などの法律行為をしたり、ご本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、ご本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、ご本人を保護・支援します。
①後見は、すべての 契約などを代わってしてもらう、とりけしてもらうことができます。
②保佐は、財産にかかわる重要な 手続・契約などをいっしょに決めてもらう、とりけしてもらう、代わってしてもらうことができます。
③補助は、一部の限られた 手続・契約などをいっしょに決めてもらう、とりけしてもらう、代わってしてもらうことができます。
④任意後見とは、ひとりで決められるうちに、認知症や障害の場合に備えて、あらかじめご本人自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。
成年後見人を選任することが必要な状態にある方(ご本人)がお住まいの地域を管轄する家庭裁判所に、後見開始の審判の申立てをする必要があります。この審判を受けた方(成年被後見人)には、その財産を管理する権限を与えられた成年後見人が付されます。
後見開始の審判の申立てをする場合には、一般的に以下の書類の用意が必要です。
①申立書
②申立てをする人の戸籍謄本
③ご本人の戸籍謄本や戸籍の附票、登記事項証明書
④診断書
⑤成年後見人候補者がいる場合には、その戸籍謄本や住民票、登記事項証明書、身分証明書
これ以外にも、本人の資産や負債(借金)、最近の家計の内訳などに関する資料の提出を求められる場合もあります。
成年後見人は、成年被後見人の法定代理人として、施設の入所契約などの取引を行うこともできます。
また、成年後見人は、成年被後見人が結んだ契約を後から取り消す権限を持っています。
精神上の障がいにより、物事の是非善悪を判断する力(判断能力)が不十分な状態にある方は、③補助開始の審判を受けることができます。この審判を受けた方(被補助人)には、補助人が付されます。
補助開始の審判に際しては、補助人の選任に加えて、次のような手続きが行われます。
①同意権付与の審判:被補助人が補助人の同意を得なければならない行為を定める手続きです、
②代理権付与の審判:補助人が被補助人に化わって(被補助人の代理人として)行えることを定める手続きです。
②保佐開始の審判を受けていただくことが考えられます。
精神上の障がいにより判断能力が著しく不十分な状態にある方は、家庭裁判所で保佐開始の審判を受けることができます。保佐開始の審判を受けた方(被保佐人)には、保佐人が付されます。
被保佐人は、土地の売買、建物の新築や増改築、遺産分割協議への参加、借金などを行うにあたり、保佐人の同意を得なければなりません。保佐人の同意を得ずにこれらの行為をした場合は、その取消しが認められます。
ただし、保佐開始の審判を受ける前にした借金については、審判を受けたという理由だけでは取り消すことはできません。消費者契約法等に基づいて主張できるか検討が必要です。
その高齢者が、①65歳以上の方、②知的障がいのある方、③精神障がいのある方のいずれかに該当される場合に、その高齢者の福祉のために特に必要があると認めるときは、市区町村長は、その高齢者に後見人を付するための手続きをすることができます。
後見開始の審判の申立ては、通常本人と一定範囲の親族等にのみ認められています。しかし、法的に特別の定めがある場合に限って、市区町村長による後見開始の審判の申立てが認められます。
その人から、成年後見制度に基づく登記事項証明書を提出してもらう方法があります(戸籍謄本や住民票の写しには記載されません)。
ただし、本人、一定範囲の親族、成年後見人等法律に定められた人でなければ、交付を受けることはできませんので、相手に内緒で調べることは難しいと思われます。
一つの方法として、信頼できる方との間で任意後見契約を結んでおくことが考えられます。
任意後見契約は、ご本人の判断能力が衰えた時に備えて、信頼できる方に任意後見人となってもらうことを依頼しておくものです。
この契約の内容は必ず公正証書に記載しなければなりません(公正証書の作成は公証役場で公証人によって行われます)。
契約後、ご本人の判断能力が衰えた場合に、ご本人や一定範囲の親族またや任意後見受任者自身の申立てにより、家庭裁判所が任意後見人監督人を選任した時から、任意後見人としての職務を始めることになります。